涙が出そうになったので、上を向いて歩いた。
ずっと胸に溜めていた言葉の端っこが、ポロリとでた。
朝方、嫌な夢ばかり見た。夢の中の私は、泣いたり怒ったりしていた。
四月には、四方八方から、よからぬものがやってくる。
森の奥に、蓋をして、重石を乗せて、目張りをしている井戸がある。私はそれを、守らなくてはならない。
私は普段、結構うまくやっている。上出来、と言ってもいいぐらいだ。色々な試みは、ひとつづつ身を結んでいる。
だけど、時折嫌な赤は来る。
赤は、私の色だ。
だから、嫌な赤も私のものだ。
これが限界。定期的に、井戸は溢れる。何事にも、バランスは必要だ。
いまは柳の木の下で、風が止むのを待つしかない。